ホテルの香りはどこで使うべき?ロビー・廊下・客室の考え方

ホテルの香りは、ロビー・廊下・客室で同じように使えばよいわけではありません。場所ごとの役割や滞在時間に合わせて、香りの強さ・設置位置・使い方を考えるポイントを整理します。

ホテルのロビーから廊下へと視線が抜ける上質な館内空間

ホテルに香りを取り入れようとすると、最初に「どんな香りにするか」を考えたくなります。

ただ、実際の空間設計では、その前に決めたいことがあります。

どこで、どのように香らせるか。

ロビー、廊下、客室では、ゲストの過ごし方も、滞在時間も、香りに求められる役割も違います。ホテル全体を同じ強さで香らせればよいわけではありません。

香りを空間体験の一部として考えるなら、場所ごとの役割から設計することが重要です。

ロビーは「ホテルの第一印象」をつくる場所

ホテルで香りを取り入れる場所として、最もイメージしやすいのがロビーやエントランスです。

ゲストがホテルに到着し、外の環境から館内へ切り替わる場所だからです。内装、照明、音楽、スタッフの迎え方と同じように、香りも「ここはどんなホテルなのか」を最初に伝える要素になります。

国内でも、香りをエントランスの体験として位置づけているホテルがあります。

ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町では、ホテルに足を踏み入れた瞬間から滞在への期待感を高め、「このホテルへ帰ってきた」と感じられることを目指して、ホテル独自の香りを設計しています。

ザ・プリンス さくらタワー東京でも、ホテル玄関に香りを取り入れ、再訪したゲストが「第二のお家」に帰ってきたような安心感を感じられることを意図しています。

ウェスティンホテル東京も、ロビーでブランド独自のホワイトティーの香りを使い、到着時の体験の一部として位置づけています。

ロビーの香りは、単に「良い匂いをさせる」ためではありません。ホテルに入った最初の数分で、その場所らしさを感じてもらうための設計です。

廊下は、体験を「つなぐ」場所

ロビーと比べると、廊下は目的地ではありません。

ゲストは、ロビーから客室へ、客室からレストランや大浴場へと移動する途中に廊下を通ります。滞在時間は短い一方で、ホテルの印象が途切れやすい場所でもあります。

そのため、廊下では香りを強く主張させるより、ロビーで感じた世界観を静かにつなぐ程度に設計する方が自然です。

同じ香りを使う場合でも、ロビーと同じ強さにする必要はありません。空間の広さ、空調、人の流れを見ながら、存在を意識しすぎない程度に調整します。

また、廊下では食事、清掃、換気、設備など、さまざまな匂いが混ざることがあります。

ここで注意したいのは、香りを「嫌な臭いを隠すもの」として使わないことです。異臭があるなら、まず原因を特定して改善する。そのうえで、ホテルらしい空気感をつくるために香りを使う。この順番が重要です。

客室は、ロビー以上に慎重に考える

客室は、ロビーや廊下とは性格が大きく異なります。

ゲストが数時間から一晩以上を過ごす、プライベートな空間だからです。

実際、バルセロナの4つ星ホテルで行われた実験では、香りのある客室を体験したグループは、香りのない客室を体験したグループより、平均的に幸福感や感情状態が良かったことが報告されています。

一方で、客室での香りについては、ロビーなどの共用部と比べると研究の蓄積はまだ多くありません。

さらに、香りの感じ方には個人差があります。心地よいと感じる人がいる一方で、強い香りを苦手とする人もいます。

そのため客室では、「香りを入れるかどうか」そのものを含めて設計する必要があります。

常に一定の香りを漂わせるだけでなく、濃度を抑える、希望する客室だけに導入する、アメニティやルームスプレーなどゲスト自身が選べる形にする、といった方法も考えられます。

客室では、ブランドを強く主張することより、ゲストの快適性を優先する。これが基本です。

同じ香りでも、場所によって使い方を変える

ホテル全体に一つの香りを使うこと自体が問題なのではありません。

重要なのは、同じ香りを、すべての場所で同じように使わないことです。

ロビーでは、到着した瞬間の印象をつくる。

廊下では、その印象を客室まで静かにつなぐ。

客室では、長時間過ごすことを前提に、より控えめにする、あるいはゲストが選べるようにする。

同じホテルの中でも、場所によって役割は変わります。香りの種類だけではなく、濃度、稼働時間、設置位置まで含めて調整して初めて、空間に合った香りになります。

嗅覚には、同じ匂いにさらされ続けると感じ方が弱くなる「慣れ」もあります。スタッフが「香りが弱くなった」と感じて濃度を上げ続けると、初めて訪れたゲストには強すぎる可能性があります。

だからこそ、香りの強さは感覚だけで決めず、実際にその場所を利用するゲストの反応を見ながら調整していくことが大切です。

「何を香らせるか」より先に、「どこで、何のために」を考える

ホテルの香りというと、ウッド系にするか、シトラス系にするか、といった香り選びに目が向きがちです。

しかし、その前に考えたいのは、

どの場所で、ゲストにどんな体験をしてほしいのか。

ということです。

第一印象をつくりたいのか。

ホテルの世界観を館内でつなげたいのか。

客室でより心地よく過ごしてほしいのか。

目的が違えば、香りの使い方も変わります。

Remniaでは、香りそのものだけではなく、ホテルのコンセプト、客層、空間条件を踏まえて、「何を、どこで、どれくらい香らせるか」まで含めて設計します。

良い香りを置くことではなく、その場所で過ごす体験に香りをどう組み込むか。

そこから考えることが、ホテルの香り設計の出発点です。

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